ミネルバ税理士法人 上田公認会計士事務所

発行:2019-08-13
ueda-staff

就業規則の見直しポイント

いつもお世話になっております。
品川区五反田最大手のミネルバ税理士法人でございます。
**************************************************************

1 就業規則の重要性と見直しの効果

会社が抱える問題点

就業規則は、貸金や労働時間、休日、休暇、服務規律や懲戒などについて、社員の入社から退職までの労働条件や就業上のルールを定めた、会社の「ルールブック」です。
近年は、インターネットの普及により、労働者側も労働基準法等の知識と情報を得られるようになり、労働条件に対する要求が厳しくなってきました。会社で発生する問題に対応していくには、統一的なルールを決める必要があり、統一的なルールをまとめたものが就業規則になります。しかし、中小企業の就業規則で散見される問題は以下の通りとなっています。

①厚生労働省やインターネットにあるひな形をそのまま使っている。
②制度が変更したにもかかわらず見直しをしていない。
③会社で起こり得るトラブルを想定していない。


上記のような場合、労務トラブルに対応できなかったり、就業規則に記載してある内容が足かせとなる場合があり、会社が不利な状況に立たされることになります。

就業規則の効果

就業規則には、以下のような効果があるため、自社の実態にあったものを作成する必要があります。

①会社が、社員の雇用において生ずる様々なリスクに備えることができる。
②労使間の労働条件や服務規律の理解や解釈の違いから起こるトラブルの防止になる。
③万が一、労使間でトラブルが生じた際、その解決の道しるべとなる。
法令を無視した就業規則は、その部分は無効となりますし、トラブルの元となってしまいます。


当然、労働基準監督署への届出の際に指摘を受けます。
今やコンプライアンスは企業運営にとって不可欠なものであり、労働基準法等の改正は頻繁に行われますので、定期的な就業規則の見直しが必要です。

社内ルールを反映させた就業規則の重要性

近年発生している様々な労務トラブルは、会社と社員との間で、労働条件や服務規律などにつ
いて理解や解釈が異なっていることが原因となっています。
また、病気等で休職する社員への対応についても、会社として放置できない問題となっています。


2 職場の規律を高める見直し方法

始末書を提出しない社員への対応事例

【事例】
当社の社員Aが、会社のルール違反となる行為を行ってしまいましたが、内容も軽いものであったので、始末書の提出を求めました。しかし、始末書を一向に提出してきません。会社の秩序維持のために、業務命令として始末書を書かせることはできますか。

(1)対応方法
始末書は反省文や謝罪文という意味を持っているので、これを強制すると個人の自由な意思を尊重する憲法などの法理念に反する場合があります。
しかし、本人が始末書を提出しない場合は、顛末書という形で報告させることはできます。
顛末書の提出義務を就業規則に明記しておくことで顛末書を提出しない場合は、会社への報告義務違反として、懲戒処分も可能になります。
なお始末書という名称でも、就業規則に報告書としての意味しか持たないものであると明記されていれば、提出を義務付けても問題はありません。

(2)就業規則記載例
今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

(懲戒の種類)
第○条 懲戒は、始末書をとった上で、その情状により次の区分で行う。
①譴責:将来を戒める
②減給:1回について平均賃金1日分の半額、総額が一給与計算期間における給与総額の
10分の1を限度に行う。
③出勤停止:30日以内の出勤停止を行い、その間の給与は支給しない。
④停職:6か月以内の期間を定めて出勤を停止し、その期間の賃金は支払わない。
⑤降格、降職:役職の引下げ及び資格等級の引下げのいずれか、またはその双方を行う。
⑥諭旨解雇:諭旨解雇は、懲戒解雇相当の事由がある場合で、本人に反省が認められると
きは退職願を提出するように勧告する。ただし、会社の定めた期間内に勧告に従わない
ときは懲戒解雇とする。
⑦懲戒解雇:即時解雇とする。また、労働基準監督署長の認定を受けたときは解雇予告手
当を支給しない。
2 社員は、会社から指示がある場合は、始末書または顛末書を提出しなければならない。


3 暗黙の了解を見える化するルール作り

副業に関するルール整備

【事例】
当社の社員Dが、土日の休みの日に警備員のアルバイトをしていることが判明しました。
本人に確認したところ、間違いないと認めています。
他の社員も同じようなことをしている可能性もあり、会社としてどのように対応していけ
ば良いでしょうか。

(1)対応方法
基本的には、社員は労働契約に基づき、1 日のうち一定の限られた時間のみ労務に服することが原則となります。従って、就業時間外は本来社員の自由な時間になりますので、基本的には会社が一方的に兼業を禁止することはできません。
副業のために本来の労務提供ができないのは認められないことですが、最近では、生活のためにやむを得ず副業を行なう人も増えているため、副業を禁止するのではなく本来の労務提供に支 障がなければ許可をするという許可制にして就業規則に記載することが一つの方法と考えます。
ただし、副業が以下のようなものに該当する場合は、許可をする必要はないと考えます。

①副業の負荷が高く、本来の業務に専念できない、十分な能力を発揮できない場合
②競合する他社でのアルバイト等、会社の利益が損なわれると判断される場合
③会社固有の技術やノウハウが漏れてしまう可能性がある場合
④会社の名前や名刺を利用して副業を行った場合
⑤会社の品位を落とす副業を行った場合


(2)就業規則記載例
今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

(社員の兼業)
第○条 社員が就業時間外に兼業を行う場合は、事前に会社から許可を得なければならない。無許可の兼業はこれを禁止する。


4 社員満足度を高める規定見直しのポイント

社員のレベルアップをサポートするためのルール規定

【事例】
当社では、社員の能力向上のために、資格取得支援制度の導入を検討しています。しかし、せっかく資格を取得しても、当社で資格を活かすことなく退職されては、困ります。何か、良い方法はありますか。


(1)対応方法
資格取得後、一定期間の勤務継続を義務付けたり、その期間内に自己都合退職したときには費用の全額を返還させるといった内容の社内規程を設けてしまうと、労働基準法第16 条(賠償予定の禁止)に違反する可能性があります。これを回避する方法として、資格取得費用等を援助する形を取り、会社側は貸付金契約を結ぶという方法があります。
あくまでも貸付金なので、会社は費用を支給したわけではなく、立て替えていることになります。社員は費用を会社に返済する債務を負いますが、会社が定める一定期間勤務したときは、「返済を免除する」という規定を盛り込みます。
社員に対して貸付金についての詳細な説明を行い同意を得ること、資格取得は業務命令ではなくあくまで本人の意思によるものであり、会社はそれをバックアップする用意があるという立場が重要になります。


(2)就業規則記載例
今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。
(資格取得費用)

第○条 会社は、資格取得する社員に対し、資格取得にかかる費用を貸与するものとし、貸
与は必要に応じて随時行う。この貸付金は無金利とする。
2 資格取得後、会社で○年以上勤務した場合は、前項により貸与した資格取得にかかる費
用の返還を免除する。
3 会社と社員は、貸付金契約を締結する。

********************************************************************
税務、経理でお困りなことがありましたら、お気軽に
品川区五反田最大手のミネルバ税理士法人にご連絡ください。


お問い合わせ
はこちら