アスリート・スポーツ選手のためのクラウドファンディングによる資金調達の税務リスク
この記事の目次
品川区五反田にありますミネルバ税理士法人現役アスリート税務アドバイザー寺岡です。
当社ではスポーツ選手などの「自分自身で稼ぐ」事業主の方を応援しています。ここ最近スポーツ選手やアスリートの方の税務会計・法人成りのご相談が増えています。「武術太極拳」の現役選手である筆者が、アスリートは必ず知っておくべき会計・税務に関する情報をお伝えします。
今回は、スポーツ選手やアスリートが個人でクラウドファンディングによる資金調達を行った場合の税務的な注意点をご紹介します。
アスリートやスポーツ選手にとって活動資金の調達は重要な課題です。企業などスポンサーによる資金調達は知名度のある競技やプロ選手でなければ難しいでしょう。一方、クラウドファンディングでの資金調達は広く一般のファンや支援者を対象とすることができるため、マイナー競技の選手やアマチュア選手でも十分な資金を調達することができる可能性があります。
活動資金は十分ですか?クラウドファンディングのメリット、注意点
クラウドファンディングで資金調達をすることには以下のようなメリットがあります。
・広く一般の支援者から資金を調達することができる・一口ごとの支援金額を設定できるので、支援者が少額から支援しやすい・直接「ファン」からの支援を受けられるのでファンとの絆を作ることができる・メディアやSNSで広報することで認知度アップを目指せる・新聞やネットニュースなどを活用することで広く広報することができる
このように、クラウドファンディングは支援者(=ファン)との絆や繋がりを直接感じることができるという点でスポーツ選手の資金調達方法として適していると言えます。また、スポンサーを集めるよりも比較的簡単にプロジェクトを始めることができる点はマイナー競技やアマチュア選手にとっての利点です。
しかし、広く一般の方から資金調達を行う=他人から預かった資金を使うことには責任が伴います。スポーツ選手がクラウドファンディングで資金調達をする場合の注意点についてまとめてみました。
・なぜ資金が必要なのか、どのように使う予定なのかを開示する必要がある・支援に対してリターンを設定する必要がある・プロジェクトの途中報告や完了報告が求められる・失敗や炎上のリスクがある・集めた資金は収入となるので税務申告が必要になる・繰り返すと資金が集まりにくくなり、効果が薄くなる
特に、他人から集めた資金をどのように使ったかという報告は必須です。支援者に向けて「あなたの支援のおかげでこんなことができました」という感謝のメッセージを伝えることで、支援者はまた支援したい、これからも応援しようという気持ちになります。
クラウドファンディングで資金調達をした場合に必要な税務手続
クラウドファンディングで資金調達を行った場合、その集まった資金は「収入」となります。所得税はもちろん、消費税や贈与税についても対応が必要です。
スポーツ選手としての活動による収入を確定申告の際に「事業所得」として申告している場合、クラウドファンディングで調達した資金は収入として「事業所得」の申告に含めます。
クラウドファンディングには大きくわけて【購入型】支援金に応じてリターンを行う場合と【寄附型】リターンなしの場合の2つの形式がありますが、それぞれで税務的な取り扱いが異なるので注意が必要です。
「購入型」のクラウドファンディングの場合
購入型のクラウドファンディングとは、リターン品がある場合をいいます。この場合、税務上では支援者へリターン品を販売したと考えられます。支援額は売上として消費税の課税対象となります。
クラウドファンディング以外の収入で消費税課税売上になるものがある場合、合計額が1,000万円を超えるかどうかに注意しましょう。1,000万円を超える場合、翌々年に消費税納税義務が発生し、消費税の確定申告が必要になります。
消費税の確定申告は所得税の確定申告とは別に行う必要があるため忘れずに申告しましょう。
「寄附型」のクラウドファンディングの場合
寄附型のクラウドファンディングとは、リターン品がない場合をいいます。支援者が法人か個人かによって税務上の取り扱いが異なります。
支援者が法人の場合は寄附収入となります。業務に関して受けるものは事業所得(又は雑所得)として所得税の課税対象となります。寄付には対価性がないため消費税は課税対象外となります。
支援者が個人の場合は贈与を受けたことになり、贈与税の対象となります。
贈与税の申告は所得税の確定申告とは別に行う必要があります。また、クラウドファンディング以外で家族などから資金援助を受けている場合は贈与となる場合があるため正しく把握し、申告することが必要です。
アスリート・スポーツ選手にはクラウドファンディングでの資金調達がおすすめ
クラウドファンディングによる資金調達は、企業スポンサーを集めるよりも比較的簡単に始めることができ、少額から募集することができるので、マイナー競技の選手やアマチュア選手にとって適した資金調達方法です。
クラウドファンディングには購入型と寄附型の2つの支援方法があり、それぞれで税務上の取り扱いが異なります。所得税の確定申告の他に、消費税や贈与税の申告が必要になる場合があるので申告漏れには注意が必要です。税理士に相談することをおすすめします。
ミネルバ税理士法人では、クラウドファンディングを利用した資金調達による起業支援、新規事業立ち上げ支援を行っています。現役のアスリートである税務サポ―トアドバイザーも在席していますので、スポーツ選手・アスリート特有の悩みや事情に寄り添った事業の立ち上げ、会社設立、税務サポートをご希望の方はぜひ一度お問い合わせください。
お問合せいただく際は、「スポーツ選手のブログを見て問合せした」とご連絡いただければと思います。オンラインでの対応も可能ですので首都圏以外からのご依頼もお待ちしております。
アスリート税務アドバイザー
北海道大学大学院出身。「武術太極拳」の現役選手。競技では2026年アジア競技大会日本代表・メダル獲得を目指しながら、デュアルキャリアアスリートとして、ミネルバ税理士法人に勤務。税務スタッフアドバイザーとしてお客様を担当しながら、スポーツ選手、コーチ、インストラクターのための税務・会計アドバイスを発信中。
将来の夢は、プロアマ問わずスポーツ選手をはじめとした「自分自身でたたかう人」に寄り添う税理士になること
[経歴]
第8回アジアジュニア武術選手権大会 [A組]太極拳6位・太極剣6位第7回アジアジュニア武術選手権大会 [A組]太極拳5位・太極剣4位第39回全日本武術太極拳選手権大会[自選難度]太極拳2位
2023年国民体育大会「燃ゆる感動かごしま国体」武術太極拳 成年女子 総合太極拳(自選)北海道代表
