財産を残す納税戦略
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法人経営者の場合、事業で稼いだ利益を役員報酬でとる、配当でとる、法人に留保するという選択が出来ます。役員報酬は稼いだ結果の利益ではなく、向こう1年間の見込を立てて定期同額でとらなければなりません。かつて法人税率が高かったころ(約半分が税金)は、利益は全て役員報酬でとって、法人利益は無しにするというやり方が多かったのですが、最近は法人税率が下がり、他方所得税率が上がってしまったので、経営者の生活費として月々必要な金額を役員報酬にして、残りは法人に留保するというやり方が賢い納税戦略です。そこで、自社の役員報酬と法人利益への分配額を変えることで納税額がどのように変わるのか試算を行ってみることをお勧めします。弊事務所では決算時に次年度の役員報酬の試算をするサービスを行っています。希望される方は担当者までご連絡ください。
タックスヘイブンの情報漏れ
「パナマ文書」の流出
2016年4月4日、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、タックスヘイブン(租税回避地)での会社設立を代行するパナマの法律事務所から膨大な内部文書が流出したファイルを公開した」と各報道機関が一斉に報道を始めました。
そもそもタックスヘイブンとは
タックスヘイブン(Tax Haven)とは、租税回避地と呼ばれる、税金がないか、もしくはあっても税率の極めて小さな国・地域のことをいいます。そして、より重要なことは、金融機関による顧客の機密情報保持が徹底しているということにあります。
そこに、脱税やマネーロンダリングなどの犯罪行為も入り込む余地があるので、何だか胡散臭くて怪しい存在というイメージを持たれる背景となっています。
日本の大手警備会社の創業者らも活用?
東京新聞(2016年4月4日朝刊)の報道によると、日本の大手警備会社の創業者らもタックスヘイブンを使って700億円の株式管理を行っていたとされています。
創業者らと創業者親族が、それぞれタックスヘイブンに保有する複数法人を使って、株式の一部移転をすることで、国内で直接保有する資産を大幅に減少させたようです。「それぞれが現地に保有する複数の法人間の取引は贈与にならない」という税制を活用し、合法的に、相続税や贈与税の軽減を図ったのではないかと推測されています。
あの裁判事例に似ている!
この報道を見て「オーブンシャホールディングス事件」を思い出しました。日本の特定現物出資規定とオランダの税制を組み合わせることで、日本に保有する株式の経済価値を他者に移転しようとした事例です。
こちらは裁判で国側が実質的に勝利しましたが、本件は、新聞報道を見る限り1990年代の取引ですから、何らかの課税漏れがあったとしても、もはや時効のようです。
タックスヘイブン情報も政府は収集中
これまでタックスヘイブンの情報は厚いベールに阻まれて税務当局が情報を入手することは困難でした。しかしながら、日本政府は平成22年以降、「租税に関する情報交換を主たる内容とする条約(いわゆる情報交換協定)を締結しており、現在10条約が締結されており、こうした情報も把握されるようなシステムが構築されています。