ミネルバ税理士法人 上田公認会計士事務所

発行:2024-12-02
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フリーランス新法について

今回は2024年11月1日から施行されたフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)について説明させていただきます。

フリーランス新法は、働き方の多様化が進み、フリーランスとして働く人が増える一方で、報酬の遅延や不当な減額などの問題が頻発していたため、このような問題を解決し、フリーランスと発注事業者の間の取引をより公正なものにすることを目的としています。

フリーランスとは業務委託の相手方である事業者で次の者を指します。

(1)個人であって、従業員を使用しないもの

(2)法人であって、代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの

(1),(2)に共通する「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者を雇用することをいいます。

フリーランスに業務委託を行う事業者が順守しなければならない事項は、以下の7項目です。

①書面等による取引条件の明示

フリーランスに対して業務委託をした場合には直ちに一定の項目を書面又はメール等により明示することを求めています。

②報酬支払期日の設定・期日内の支払

発注事業者は発注した物品等の給付を受けた日から起算して原則60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に支払わなければならないとしています。

③業務委託の禁止行為

発注事業者は、フリーランスに対して、不当な注文内容の変更や報酬を減額するなどの行為が禁止されます。

④募集情報の的確表示

広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。また、6か月未満の業務を委託している場合も配慮するよう努めなければなりません。

⑥ハラスメント対策に関する体制整備

ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応のための体制整備などの必要な措置を講じなければなりません。

⑦中途解除等の事前予告・理由開示

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合、少なくとも30日前までに、書面又はメール等による方法でその旨を予告しなければなりません。

違反する事実がある場合、フリーランスは所管省庁にその旨を申し出ることができ、その申出の内容に応じ、所管省庁が必要な調査を行い、指導・助言のほか勧告を行います。勧告に従わない場合には、命令・企業名公表等が行われ、さらに命令に従わない場合は罰金が科されます。

そのため、法律の趣旨を理解し、法令を遵守した取引を行うことが重要です。フリーランスとの信頼関係を築き、長期的な取引に繋げましょう。

簡易な扶養控除等申告書

今年の年末調整時から開始される新制度

そろそろ年末調整の時期ですが、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する扶養控除等申告書から「簡易な扶養控除等申告書」が提出できるようになりました。扶養控除等申告書は提出期限が「その年の最初に支払を受ける日の前日」となっているため、年末調整の際に出すのが通例です。この冬登場の簡易な申告書はどういう時に出せるのか、チェックしておきましょう。

何も異動がない場合出せる

簡易な扶養控除等申告書はその前年に提出した扶養控除等申告書等に記載すべき事項に異動がない場合出せます。
書き方としては氏名やマイナンバー(個人番号)、住所の記載を行った上で、「前年から異動なし」と余白に書くと、扶養控除等申告書は簡易な申告書となります。別の用紙等はありません。

どんな異動があるとNGか

以下の項目に1つでも該当すると、簡易な扶養控除等申告書は提出できません。
・自分や源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族の住所又は居所の異動
・自分や控除対象扶養親族の氏名の変更
・マイナンバーの変更
・源泉控除対象配偶者・控除対象扶養控除・16歳未満扶養親族の該当非該当の変更
・寡婦、ひとり親、勤労学生の変更
・(特別)障害者控除の変更
・源泉控除対象配偶者の所得見積が95万円超になる・控除対象扶養親族や年少扶養親族の所得見積が48万円超になる
・扶養親族の年齢の変動による控除の区分変更
・国外居住親族の扶養控除適用要件の区分変更
・年少扶養親族が16歳になり控除対象扶養親族に該当

簡易なのは便利なの?

提出する従業員にとっては手間が減るため便利そうに見えますが、簡易な扶養控除等申告書は7年間保存義務があり、異動がないかを調べるために通年簡易な申告書を提出していた場合は「最後に提出を受けた簡易ではない申告書」の内容も保存する必要があるため、書類(もしくはデータ)の保存は増えてしまうことも。また、うっかり「前年から異動なし」として出してしまった等のケアレスミスも増えそうで、担当者の方の作業が増えるかもしれません。

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