電子帳簿保存法について
最近CMやニュースでよく聞く「電子帳簿保存法」について
令和5 年度税制改正がありましたので主な改正事項についてご案内させていただきます。
◇「電子帳簿保存法」とは
そもそも「電子帳簿保存法」とは、税法上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書など(国税関係書類)」を紙ではなく電子データで保存することに関する制度をいい、3つの制度に区分されています。
①電子帳簿等保存【希望者のみ】
ご自身で最初から一貫してパソコン等で作成した帳簿や国税関係書類を電子で保存。
②スキャナ保存【希望者のみ】
取引相手から受け取った書類等を画像データ化して保存。
③電子取引データ保存【対象者は対応が必要】
請求書・領収書・契約書・見積書に関する電子データを送付・受領する電子取引によるファイルをデータで保存。
①電子帳簿保存、②スキャナ保存について
希望者のみですので今まで通り紙保存で問題ございません。
③電子取引データについて
現時点では紙保存でも問題ありませんが、2024 年1 月1 日以降データ保存が求められます。
こちらについては中小企業の経理実務に即した猶予措置が講じられています。
◇3つの制度の対象
①電子帳簿等保存
・帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、売上帳等)
・決算関係書類(損益計算書、貸借対照表等)
・取引相手に交付する書類の写し(見積書、納品書、請求書、領収書の控え)
②スキャナ保存
・取引相手から受け取った書類
・自社が作成して取引相手に交付する書類の写し(見積書、納品書、請求書、領収書等)
③電子取引データ
・電子データより受領・送付した請求書・領収書・契約書・見積書等
◇③電子取引データの保存
電子取引データは原則下記3 点全ての対応が必要になります。
1 .改ざん防止のための措置をとる
具体的には「タイムスタンプ付与」、「訂正・削除の履歴が残るシステム等での授受・保存」、「改ざん防止のための事務処理規程を定める」のいずれかの方法での対応が必要になります。
2.ディスプレイ・プリンタ等を備え付ける
税務職員に指定されたデータを速やかに出力できるようにする必要があります。
3 .電子取引データを日付・金額・取引先で検索できるようにする
こちらについては下記要件の充足が必須です。
・日付又は金額について、範囲を指定した検索ができること
・「日付・金額・取引先」のうち2つ以上項目を組み合わせて検索できること
具体的な方法として「システムの導入」、「表計算ソフトで索引簿の作成」、「規則的なファイルを付す」というものが挙げられます。
また、次の2つの条件に当てはまる場合「3.電子取引データを日付・金額・取引先で検索できるようにする」要件の全てが不要となります。
・基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の場合 (令和5年度税制改正で従来の1,000万円以下から5,000万円以下の事業者に拡大されました。)
・電子取引データをプリントアウトした書面を、日付及び取引ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている場合
◇猶予措置の対象
2つの場合に猶予措置が認められ、1.改ざん防止措置や3.検索機能の確保の要件は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができることとされました。
〇 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合(事前申請等は不要です。)
※「相当の理由」とは例えばシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった保存を行うための環境が整っていない事情がある場合には認められるとされています。そのためシステム等や社内のワークフローの整備が整っており要件に従って保存できるにもかかわらず、資金繰りや人手不足等の理由がなく保存していない場合にはこの猶予措置の適用は受けられないことになります。(電子帳簿保存法取扱通達7-12・電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問61)
〇 税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
2023 年10 月1 日から開始される予定のインボイス制度のほかに2024 年1 月1 日から電子帳簿保存法(電子取引データ保存)についても運用が開始される予定です。
重要な制度改正が続きますので不安な方も多くいらっしゃるかと思いますが、不明な点等ございましたら担当者にお問い合わせください。