社会保険料が安くなる従業員へのインセンティブの払い方
この記事の目次
- 1 ①インセンティブとは『歩合給』のことを指します。インセンティブの支給は節税対策としても効果的です。
- 2 ②社会保険料が決まるタイミングについて簡単にまとめると、毎年4月~6月の3ヶ月間の給与の平均から、「保険料額表」を参照し、社会保険料の支払金額が決定する『原則』と、前年7月から当年6月の1年間の給与の平均から社会保険料の支払金額が決定する『特例』の2種類あり、有利な方法(支払金額が安くなる方)を選択することができます。また、『特例』が有利な場合、従業員個別で『特例』を適用するかしないか選択をすることができます。
- 3 ③上記2点を踏まえたうえで、社会保険料が安くなる従業員へのインセンティブの払い方についてお伝えいたします。
- 4 ④ここで、実際の数値を使用し、『原則』と『特例』での有利判定をしてみようと思います。
- 5 1.『原則』>『特例』の場合
- 6 2. 『原則』<『特例』の場合
いつもお世話になっております。 品川区五反田最大手のミネルバ税理士法人でございます。 ********************************************************** 社会保険料とは給与の受給者が特定の要件を満たしている場合、加入すべき保険になります。社会保険の加入条件は割愛させていただきます。 また、社会保険料の『翌月控除』と『当月控除』の2種類の控除方法、社会保険料の未払計上については下記のブログをご確認ください。
今回は社会保険料が安くなる従業員へのインセンティブの払い方についてご説明いたします。全体の流れとして、①インセンティブの概要、②社会保険料が決まるタイミング、③社会保険料が安くなる従業員へのインセンティブの払い方について、④社会保険料の比較例となります。
①インセンティブとは『歩合給』のことを指します。インセンティブの支給は節税対策としても効果的です。
一般的には、月の売上に応じて、又は作業の出来高で決める方法等、インセンティブを決まった方法で支給するといったことはなく、企業の方針で支給するかどうか、インセンティブの決め方が変わってきます。また、企業によって、賞与として支給する場合と、月額の給与に歩合給として支給する場合、3ヶ月に1回インセンティブを支給する場合等あります。 インセンティブの支給対象も会社、そして従業員との雇用契約で変わってきます。税院にインセンティブを支給しなければならないということはなく、従業員と会社との間で契約する雇用契約書に基づいてインセンティブを支給するかどうかが決まります。 ただし、役員へのインセンティブの支給はできません。役員賞与を支給する場合は事前に届出が必要になるため、注意が必要です。
②社会保険料が決まるタイミングについて簡単にまとめると、毎年4月~6月の3ヶ月間の給与の平均から、「保険料額表」を参照し、社会保険料の支払金額が決定する『原則』と、前年7月から当年6月の1年間の給与の平均から社会保険料の支払金額が決定する『特例』の2種類あり、有利な方法(支払金額が安くなる方)を選択することができます。また、『特例』が有利な場合、従業員個別で『特例』を適用するかしないか選択をすることができます。
※「保険料額表」は標準報酬月額の等級が記載されており、社会保険料・介護保険料・厚生年金の支払額と、負担額を求める表を指します。都道府県で金額に変動があります。留意点として、『特例』を選択した場合、各従業員に対して同意書の作成・署名が必要となります。細かい内容については、社労士の先生にお伺いすると良いでしょう。 社会保険料の決定時期については改めてブログにいたしますので、そちらの記事も参考にしてみてください。
③上記2点を踏まえたうえで、社会保険料が安くなる従業員へのインセンティブの払い方についてお伝えいたします。
結論から申しますと、従業員によって基本給・交通費等の支給金額は変動するため、会社として『原則』と『特例』で有利な方法を選択し、必ずこの方法を使用すれば、安くなるとは言えません。ここでは、社会保険の算定方法は2種類あり、そのどちらかを選択することができるとだけ覚えていただければと思います。
④ここで、実際の数値を使用し、『原則』と『特例』での有利判定をしてみようと思います。
例では毎月インセンティブを1年間固定して支給している場合の数値で比較をしてみます。その他の情報は以下のようにいたします。 また、社会保険料の負担額は従業員、企業それぞれ2分の1となります。
1.『原則』>『特例』の場合
令和3年1~12月(前年) 【固定給20万円、交通手当1万円、インセンティブ10万円、東京都在住、介護保険なし】 令和4年1~12月(今年) 【固定給30万円、交通手当1万円、インセンティブ10万円、東京都在住、介護保険なし】 『原則』 ・30万+1万+10万円=41万円 →1年間支給額合計 492万円 ・令和4年4~6月平均額 →41万円 ・保険料額表27(24)等級 →社会保険・厚生年金の負担額合計 57,687円 →1年間社会保険負担額 約70万円 『特例』 ・20万+1万+10万円=31万円(令和3年7~12月)→支給額合計 186万円 ・30万+1万+10万円=41万円(令和4年1~6月)→支給額合計 246万円 →令和3年7月~令和4年6月 1年間支給額合計 432万円 ・令和3年7月~令和4年6月平均額 →36万円 ・保険料額表25(22)等級 →社会保険・厚生年金の負担額合計 50,652円 →1年間社会保険負担額 約61万円 →1.結果:特例の方が有利
2. 『原則』<『特例』の場合
令和3年1~12月(前年) 【固定給30万円、交通手当1万円、インセンティブ20万円、東京都在住、介護保険なし】 令和4年1~12月(今年) 【固定給30万円、交通手当1万円、インセンティブ10万円、東京都在住、介護保険なし】 『原則』 ・30万+1万+10万円=41万円 →1年間支給額合計 492万円 ・令和4年4~6月平均額 →41万円 ・保険料額表27(24)等級 →社会保険・厚生年金の負担額合計 57,687円 →1年間社会保険負担額 約70万円 『特例』 ・30万+1万+20万円=51万円(令和3年7~12月)→支給額合計 306万円 ・30万+1万+10万円=41万円(令和4年1~6月)→支給額合計 246万円 →令和3年7月~令和4年6月 1年間支給額合計 552万円 ・令和3年7月~令和4年6月平均額 →46万円 ・保険料額表29(26)等級 →社会保険・厚生年金の負担額合計 66,129円 →1年間社会保険負担額 約80万円 →2.結果:原則の方が有利 このように社会保険の比較は計算が複雑なので、関わりのある社会保険労務士にも相談することをお勧めします。 ********************************************************** 税務、経理でお困りなことがありましたら、お気軽に 品川区五反田最大手のミネルバ税理士法人にご連絡ください。